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第9話 ケムリを喰らう

last update Veröffentlichungsdatum: 08.08.2026 21:30:11

 洗濯物を干そうとベランダを覗き見た時だった。

 白いケムリがたなびきながら流れ込んでくるのが目に入る。

 そちらの方へ視線を向けると、ベランダから身を乗り出すようにして夜の街を眺めている隣の部屋の住人がいた。

 木井きいさんの旦那さんだ。

 下の名前は知らない。

 年は三十代の半ばって聞いたんだっけ。

 背の高い彼は体を丸めて外気を遮るようにしてケムリを抱え込もうとしていた。

 ――ああ、部屋で吸うのを禁止されているんだ。

 木井さんの様子を見てすぐにわかった。

 彼はほんのわずかなケムリでさえ惜しいようで、ケムリを追ってこちらのベランダへ身を乗り出してくる。

「こんばんは」

 私は偶然を装って洗濯物を抱えたままベランダに出た。

「香塚こうづかさん。こんばんは」

 木井さんはこちらに身を乗り出したまま大きく口を開けると、ぱくり、とケムリを口に含んだ。

 喉を大きく動かしてケムリを飲み下す。
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  • こちら、キッカイ町立図書館フシギ分室・怪奇現象対策課! ~キッカイ町の奇怪な事件簿〜   第19話 行方知れずの『ますたぁきい』・壱

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